ヘイヨーさんの人生

「小説の真のおもしろさ」(連載小説 ~第64話~)

2014/03/04 23:38 投稿

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 結局、レユレユは出版社のアシスタントとしての仕事をやめてしまった。文章に関わる仕事は好きだったし、飽きっぽいレユレユにしては長く続いた方だったが、それももはや限界だった。
 レユレユは、そういう性格だった。どこか理想主義者な部分があって、その理想を人に押しつけたりするわけではなかったが、現実がその理想とあまりにもかけ離れてしまうと失望してしまうのだった。
 世の中には、そうでない種類の人間というのも存在する。現実を現実として受け入れ、きれいな部分も汚い部分も全て認めてしまう。「仕方がない。それが現実というものなのだから。そうしないと、生きてはいけないのだから」と。レユレユには、それができなかった。

 最後の出勤日、出版社の人達に別れを告げた帰り道。レユレユは1人で道を歩きながら、職場の人達との飲み会のコトを思い出していた。
 そこで、先輩編集者がこんなセリフを吐いていた。
「どうして、オレが出す本はヒットしないんだろうな。出版の基本は学んだし、その通り実践してるはずなんだがな…」

 そりゃ、そうだろう。この人のやり方では、爆発的ヒット作を生み出すコトは難しい。あまりにも形に囚われ過ぎている。文法だとか、正確さだとか、そういうものにこだわり過ぎている。小説の真のおもしろさというのは、そこにはないというのに。そもそも読者の心理がわかっているのかも怪しい。このままだと、人は離れて行ってしまうだろう。おそらく、この人は、一生それが理解できないのだろうな…と、その時のレユレユは思っていた。
 だが、それを口にするコトはなかった。どうせ理解されないのは目に見えていたのだから。

 数年後、その出版社から、レユレユが働いていた部署は消滅する。時代の流れというのもあって、本が売れなくなってしまったからだ。だが、レユレユがそれを知るコトはない。どうせ、知る必要もない些細な出来事ではあったし。

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