ヘイヨーさんの人生

「サンタとの戦いの果てに」(クリスマス特別小説)

2013/12/24 20:19 投稿

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 今年のクリスマスも激しい戦いだった。だが、どうにか生き残るコトができた。けれども、プレゼントの1つすら奪えはしなかった。今年も、負けかな。
 辺りには無数の死体…いや、正確には誰1人死んではいないので、無数の気絶者が転がっているというべきか。奴ら“サンタ”は、それだけの能力を有しているのだ。強力な武器や兵器を持って全力でかかってくる我々“サンタ狩り部隊”をいともたやすく薙ぎ倒していく。1人の命も奪うコトなく。


 ジャリ…と、誰かが近づいてくる足音がした。サンタだ。全員、この地からは去っていったと思っていたが、まだ1人残っていたようだ。
 マズイな。もう戦う体力も精神力も残っちゃいない。どうにか一工夫して逃げおおせればよいのだが…


「ホッホッホ。そう身構えなさんなって」
 赤と白の衣装に身を包んだ白髪の老人は、そう声をかけてきた。一説によると、その昔、サンタの衣装は純白であったという。それが、襲い来る敵を返り討ちにした時に浴びた血で、徐々に赤く染まっていったのだと。

「お前さんに、クリスマスプレゼントを持ってきてやったんじゃよ」
 クリスマスプレゼントだと?何のつもりだ?
「お前さん、いい目をしておる。その心意気もよし!身体能力も充分。まるで、昔のワシを見ておるようじゃ」
 オレが黙っていると、サンタは続けた。

「ワシらは、元々、争うべき運命にはない。お前さんも憎んでおるんじゃろ?奴らを…」
「奴ら?誰のコトだ?」
「ホッホッホ。ようやく、声を聞かせてくれたな。もちろん、奴らじゃよ。現代だと何と呼ばれておったかのう?そう、“リア充”じゃ」
「リア充?」
 サンタの意外な言葉に、ついつい質問してしまう。これが、サンタの能力の1つなのか?相手を魅了する話術とでもいうべき能力なのだろうか?

「ワシも昔は、そうじゃった。お前さんのように、日々、戦いに明け暮れておった。そうして、自分の一番力を発揮できる場所を見つけたのじゃ。それが、この職業じゃよ」
「サンタが?自分の力を一番発揮できる場所?」
「そうじゃよ。リア充を憎むのではなく、リア充の為に生きる。幸せな家庭。子供達。子供達には何の罪もありはせぬ。純粋無垢なその心に、さらなる幸せを与えて世界中を回るのじゃ」

 サンタのその言葉に、オレは吐き捨てるように言った。
「ケッ…バカバカしい。リア充なんて関係ないね。そんな奴らは、どうでもいい。オレはただ戦いたいから戦う。それが生きがい。それが生きる道。人生そのものだからだ」
「ホッホッホ。なおさら、見所があるのう。お前さんなら、ワシをも超えられるかも知れん。ホレ、これがクリスマスプレゼントじゃ」

 そう言って、ポンッとサンタが投げてよこしたのは、サンタクロースの衣装一式だった。
「それをどう使うか、あるいは使わぬか。それは、お前さんの自由じゃ。最近は、この職業も高齢化が進んでのう。お前さんのような若い者が来てくれると、ワシらも嬉しいわ」
 その言葉を最後に、サンタはサッと身をひるがえし、目にも止まらぬスピードでソリに乗りこむと、巨大なトナカイに引かれて空の果てへと消えていった。


 オレは手にした衣装を放り投げようとして、考え直した。サンタとして生きる。そういう道もあるのか…
 ま、今すぐに決める必要もあるまい。次のクリスマスは1年後だ。ゆっくりと思案するさ。


 辺りでは、気絶した者達が1人また1人と起き上がり始めていた。

 ~おしまい~


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