さらに歩き続けると、今度は盗賊が現われた。
「オイ、小僧!持っている物を全てよこせ!」そう盗賊は叫んだ。
一瞬、少年はナイフを手にして戦おうかと思ったが、やめた。錆びたナイフで応戦しても、あまり役に立たないだろう。それに、相手は戦闘のプロだ。勝てるはずもない。
そこで、少年はカバンごと持ち物を全て盗賊に渡し、こう言った。
「これで全部だよ。さっきまで、パンがもう2つあったけれども、それも老人と羊に1つずつあげてしまった。これで、もう僕には何もない」
それを聞いて、盗賊は不憫に思った。
「そうか、それはかわいそうに。なら、オレもパンを1つだけもらうとしよう。残りのパンはお前が食え。他の持ち物もガラクタばかりだ。オレには必要ない」そう言って、盗賊はパンを1つ食べて、水筒の水を半分飲むと、残りは全て少年に返した。
少年は、最後のパンを口に入れ、水筒の水の残りを飲み干す。
少年が水を飲み終わるのを待ってから、盗賊はこう尋ねた。
「お前、どこへ行こうとしてたんだ?」
「別に。家を追い出されたから、ただひたすらに歩いていただけだ」
「そうか、では、どこにも行く場所がないのだな。だったら、オレの所に来い。一流の盗賊になれるように、このオレが技を仕込んでやる」
“そういうのもありかな”と思い、少年は盗賊の後をついて行くことにした。さらに、その後を羊がついて来る。
盗賊のアジトに到着すると、さっそく羊は丸焼きにされた。羊は文句1つ言わずに殺され、焼かれた。羊の毛は、織物にされ、セーターになった。
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