蓮池 レオンのブロマガ

ネイキッド・ランニング  ラン革命に参加せよ

2008/03/02 00:00 投稿

  • タグ:
  • 日記
  • 社会人になって書いたやつ
  • NIKE+
  • NIKE
  • ランニング
運動不足であることは分かっていた。
分かっていたけれど、だからと言って何もしないのが僕ら超自室特化型ユニット『穀クラッシャー』の存在意義である。
僕らユニットは来るべき最終局面『N計画』(人類NEET化計画)に備えてこうして今日も自らの純度を高めようと必死なのだけれど、それにしてもひどいなとは思い続けていた。 運動不足、甚だし。
さすがにまずいと思って先日、スポーツ用品を買いに都会に出かけた。
自室のドアを開けた時から、息切れがした。

「いやなに、税理士がうるさいんですよ。もっとお金を使えだの、なんだの」

「はあ」
都会のNIKEショップに足を運んだ。
スポーツ用品と漠然に表現したが、何を買おうかあたりは付けていたのである。
『NIKE』とアップル社『iPod』のコラボ商品『NIKE+』。
昨年末からテレビCMでプロモーションをしている、ランニングの補助マシーンだ。
「これ付けれ走れば、何か走った距離とか速度とかカロリーとかが分かるんですよね」
「はい」
「良い商品だね。気に入ったよ。おいくらですか?」
「はい、3,400円です」
「やっっすぃっすぃねー!!」
トータルテンボスのものまねも混ぜてアピールする。
「3,400円かあ。税理士は大丈夫かなあ? もっと高いもの買ってこいって怒られちゃうよ」
「はあ」
「じゃあ、これいただこうか」
「はい、あの、こちらの商品なんですが、ナイキシューズとセット商品となっておりまして」
「ははーん。シューズもついてくるってわけだね」
「いえ、専用のシューズでしかご利用いただけなくて」
「この靴じゃだめなんですか?」
「はい、その、靴下だけではちょっと」
「靴下じゃないよ。失礼な。靴下3枚重ねはほとんど靴と同じ強度を誇るよ」
「はあ、しかし、そちらの靴下ではちょっと無理かと」
「わかった負けたよ。シューズも買おう。一番安いのはどれです?」
「はい、ええと、こちらの9,750円の商品となりますね」
「やっっすぃっすぃねー!!」
トータルテンボスのものまねを再度混ぜて、自分を鼓舞する。
奥歯がギリリと鳴った。
「税理士もこれなら満足だよ。ありがとう。じゃあ、この靴も買おうか」
「ありがとうございます」
お買いあげた。『NIKE+』。これで運動不足解消だぜ有象無象ども!!

≪ひとりで走るランニングは、終わった≫
商品の銘打ちはなかなか僕のモチベーションを高めてくれる。
自室にもどり、さっそく両足に先ほど買ったナイキシューズを装填する。

 ∇ すばやさが 2 あがった !


よしよし、さすがナイキシューズ。軽いぜ。走りやすそうだぜ。
そしてそのナイキシューズに、『NIKE+』のチップをはめ込み、耳にiPodのイヤホンを装備する。
ランニング、開始。
僕は自室のドアを蹴り破り、広大なる世界へ飛び出していった。

まず階段を駆け下り、廊下を通過し、居間をぐるっと一周し、浴室で足踏みをし、キッチンで水分を補給し、トイレを出たり入ったりし、仏壇に手を振り、さらに廊下を疾走しぶべらっ!!
背後から思いもよらぬ強撃を受け、僕は廊下に倒れこんだ。
恐怖のバイオモンスターMAMAのバックアタックである。
「あんた。なに家を走りまわっとるの」
「ラ、ランニングですよ。いやだな、も、もう」
「ランニングなら外でやりなさい」
「しかし、外はウルトラバイオレット光線が」
「もう夜だ」
「しかし、対特殊ユニット用の毒ガスが」
「散布されていない」
「しかし、外はガストラ帝国が」
「占領していない」
「……」
「はやく行け、この穀つぶしが」
「僕のユニット名は穀クラッシャーだ!!」
僕はブチぎれた。そして自宅外領域に飛び出した。
ランニング、再開始。

夜の冷え込みは激しい。
僕は藤崎マーケットからランニングシャツとズボンを抜いたような恰好で走っていたので、その冷え込みは一段と体に堪えた。
左手にiPodの端末を握りしめ、僕は夜道を駆け抜けた。
今でこそ超自室特化型ユニットとして調整されているが、もともと僕はランニングが嫌いではなかった。
頭をからっぽにして走ることは、わりと楽しかったし、中学時代に行われた学年別マラソン大会で常に3位以内に入賞していた僕は、そのかつての思い出にすがるような思いで大学時代も無駄に走ったりしていた。
しかし、あるいはやはりとも言うべきか、僕の体力の衰えは思った以上に著しく、体に悲鳴を上げさせていた。
左手に持ったiPodのモニターを確認する。

 走行距離:2.14km

約2km。それだけ走っただけで息に鉄色が混じる。
脚は動く。惰性で入り続ける。けれど肺が、息が。
肺に血が滲む錯覚を覚えつつ、僕は車のライトを背に浴びながら歩道を走った。
ランニングの目標は、自宅から最寄りの駅までとその往復。
ここまでの経路で2kmもあるということは、ざっと計算して駅まで片道5km、往復10km。
はたして、ランニング初日の僕がそこまで走れるものかと、脚が鈍ってきた。
ここで折り返せば約5kmのラン。
十分じゃないか? 僕はよくやったよ。 初日にしては上出来。
たしかに目標には大きく届かなかったけど、徐々に馴らしていけばいい。
(そろそろ帰ろう)
ガソリンスタンドの光を右に受け、僕は踵を返し来た道を折り返す。
そして10mほど走り、迷った末さらに踵を返した。
脳が発火した。 諦めてばかりいる自分を叱咤し、焼却した。
(いつまでもあきらめてばかりではダメだ。やり通すという意思が大切なんだ。ここであきらめたら、芋づる式に全てが)
ランニングをしようと思った。ランニングの道具を買った。
これは僕にとっての革命だった。 無血で政権を奪取して見せた。
しかしその意思すらもここで明け渡すというのか?
公約を自ら唾棄するというのか?
やらせはせん。やらせはせんぞ。
僕は白い悪魔にマシンガンを撃ち続ける思いで、全霊を激励した。
僕のゴールは駅ではない。
≪僕のゴールは明日なのだ!!≫
今夜、完走したという事実が明日の僕に根付くのだ。根付かせてやるのだ!
僕は夜道、月に向かって自らの意思を宣誓の想いで咆哮した。
「俺のゴールは明日ナフ!!」
噛んだ。
瞬間、引き返した。

自宅が見えるところまで走って、僕は左手に持ったiPodの『NIKE+』の機能を止めた。
距離   4.81km
タイム  26:50
ペース  5:34min/km
この記録が良いものかどうかわからないけれど(おそらく悪い)、これを基準に明日からも頑張ろうという気になった。
また、NIKE+の専用ページでは自分のランをアップロードでき、世界中のランナーと比較することができるらしい。
なるほど、よくできているな、と僕は思った。
下がりやすいモチベーションをあげるのには、これくらいする必要があるのかもしれない。
僕は荒れた息を落ち着かせるために、自宅までゆっくりと歩く。
≪ひとりで走るランニングは、終わった≫
その通り、と僕は思う。 
そして右手につかんだ彼女を見て、告げる。
「今日はありがとう。また明日も頼むよ」
右手に収まる綾波レイのフィギュアは月光を受け、今日も僕に優しく微笑んでくれた。

コメント

コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事