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アニメ「タイガーマスク」DVD18巻  アニメ業界よ、原始の海に戻れ

2015/05/30 15:00 投稿

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AIR です。

今回のお題は、TVアニメ「タイガーマスク」の101~105話までの5話を
収録したDVD18巻です。知人にすすめられたのが18巻でしたため、前知識
なく視聴しましたが、18巻のみでも楽しめるものでした。これは1~100話
までを見ないことで2年以上の放送内容を想像力で補完する形の視聴になります。
当然ですがプロレスアニメですので、定期的にアクションシーンが入って眠たく
なります。しかし1~17巻を見ないで最終巻のみを再生することは、想像力を
フル稼働させなければ話がわからなくなるため、眠らずに見ることができました。
ラスト5話は1話目を長いアバンとして見ることで、残り4話を本編として見る
ことができる構成になっていますため、タイガーマスクを見直したい方は18巻
さえ手元にあれば足ります。私にとって今回が初タイガーマスクの視聴でしたが、
日本のアニメは昔から容赦がないです。これを当時の子供はTVをつけるだけで
見られたのですから規制が厳しい現代アニメが萌えに逃げたのはわかる理屈です。


本作はキャラとストーリーの強度がしっかりとしているため、歴史に残る作品に
なりました。骨子が頑丈なため、1969年のアニメでありながら、現在にでも
通用する内容になっています。また当時は大らかな時代でしたため、実在企業の
名称を画面に出すことができました。先ほど私は、タイガーマスクを容赦のない
アニメと述べましたが、最終話を一言でまとめると「正義のヒーローが試合中に
故意に殺人事件を起こしてJALの飛行機で逃亡する」という内容です。機内で
主人公の伊達直人がメッセージのような台詞を話していますが、逃亡先が海外で
あるにせよ殺人犯の言い分は言い訳にしか聞こえません。この画面で見逃しては
ならないポイントは搭乗機にJALのロゴが入っている点です。ここに架空企業
のロゴが入っていれば場面にリアリティが生まれません。画面が一気に嘘くさく
なってしまうのです。実在のプロレスラーがレギュラー出演しているなどの演出
も見逃せません。ジャイアント馬場さんが解説をしていたりします。この時代の
プロレスはアントニオ猪木さんのスタイルですから、本作は実際のプロレス模様
を参考にして試合が描かれているため、地味でありながら緊迫感に満ちています。

設定面に触れてみます。孤児出身の伊達直人は「虎の穴」という悪の犯罪組織で
プロレスラーの訓練を受けてリングにデビューしましたが、私が見ていない話で
親元と対立し、100話目までをかけて様々な刺客レスラーと戦い勝利を収めて
います。最後の敵は虎の穴のボス「タイガー・ザ・グレート」ですが、虎の穴が
不思議な組織であるのは悪のシンジケートと呼ばれていながら、裏切り者を抹殺
する場合もプロレスのリングの上で片をつけるというスポーツマンシップ溢れる
精神を持つ点です。悪の秘密組織ながら、事業内容も資金源も取引先も不明です。
これは、私の想像ですが、おそらくタイガー・ザ・グレートを名乗る代表人物は
プロレス狂です。プロレスを愛しすぎたがために、自らがリングに上がり、命を
落としました。作中では明確に死を名言されていませんがアニメの文法から見て、
ラスボスは死んだと解釈して良い展開です。以前プロレスを視聴してみたときに
プロレスの基本ルールを学びました。プロレスにはブックというシナリオがあり、
勝敗が事前に決まっています。そのため八百長はありません。それは記録映像を
見たことで腑に落ちました。プロレスはショーのため、ブックを根拠として勝つ
ことを目的に展開しません。しかしタイガーマスクは脚本に書かれたようにしか
作られないアニメでありながら、ブックがないのです。それは常に選手に本気の
戦いを要求することになります。実際に試合中に先輩が命を落とし、101話で
後輩が重傷を負います。こうした背景を繋ぎ合わせてみると虎の穴という組織が
やろうとしてきたことは「70年代プロレス業界に対して向けられた挑戦状」で
あったと読めてきます。虎の穴は試合前に勝敗が決まっている予定調和のショー
であるプロレスの破壊者でした。悪く言えば「荒らし行為」ですがブックという
欺瞞に対し挑戦してみせる組織が「悪」ならば、「必要悪」だったとも言えます。
そのために後の時代のプロレスはショーに特化せざるを得なくなり、相手選手の
疲労度を計算しながら一撃ずつダメージのコスト換算を積み立てて技を繰り出す
見世物になりました。そうしたプロレスの未来を虎の穴は見抜いていたのでした。


本編に触れてみます。タイガーマスクとタイガー・ザ・グレートの試合の結末に
ついてです。マスクを破られた時点で、タイガーマスクは「試合に敗北」をして
「生命が尽きた」のです。タイガー・ザ・グレートを倒したのは、中の人である
伊達直人です。これはアニメのタイトル「タイガーマスク」を裏切るため役者に
降りることを要求します。だから伊達直人は泣いたのです。リングから降りれば
番組からも降りるしかないため、マスクを脱ぎ捨てた時点で番組終了のカウント
ダウンが始まりました。社会的立場を失った伊達直人に帰られる家はありません。
TVで中継を見ていた「ちびっこハウス」の孤児達は、タイガーマスクの正体を
知らされても、伊達直人を伊達直人として受け入れる心の強さを持っていました。
しかし伊達直人の心中は、そうではありません。伊達直人が子供達に伝えようと
したメッセージは「人生の過酷さ」です。「人生はきれいごとだけでは切り抜け
られない」ことは、クリーンファイトを続けようとしたタイガーマスクが殺され
たことからも明白です。伊達直人は本質的には反則ファイターです。なぜならば
伊達直人をプロレスラーとして養成したのは虎の穴だからです。マスクを剥がれ
素顔になれば目的を達成するだけでした。今までの劣勢とは別人のような動きで
試合を運び、華麗な連続技を駆使した無敗のタイガー・ザ・グレートの息の根を
止めます。そもそも次々と刺客の暗殺者を送り込んできたハンターのミスターX
が試合前日に事故死したことが新聞で報じられましたから試合を棄権する選択は
ありました。それでもタイガーマスクはリングに上がりました。そして伊達直人
の顔と虎の穴流のやりかたで勝ちました。この一試合は育ての親との対決のため、
避けて通れないものです。ここには男性の通過儀礼としての意味合いがあるため、
降りることはありえず負けることもならず、勝ったところで犯罪者という茨の道
です。だから子供達のヒーローのシンボルであるマスクは後輩に委ねられました。
それではヒーローとは何でしょうか? 安易にヒーロー物を作っている制作者に
考えていただきたい課題です。何の汚れも穢れもなく勝つことを期待され続ける
人生が抱える苦しみを脚本に書き付ける勇気を持たずに「ヒーロー物」を掲げて
作られた番組は子供だましです。圧倒的な実力を持つタイガー・ザ・グレートの
敗因はシンプルです。それはクリーンファイターであるタイガーマスクを得意の
反則ファイトの中で殺害してしまったことです。期待から解放されて本来の技で
戦うことができる伊達直人は無敵です。そして容赦の無い殺人で決着がつきます。


この時代のアニメは実に少人数体制で作られています。しかし元々TVアニメは
少人数で作られるものでした。古いアニメを久しぶりに見たことで作画スタッフ
が数名だったことからエンドロールに長々と覚えきられないほどの名前が連なる
現代のアニメが異常事態であることを再認識しました。タイガーマスクは、TV
アニメの歴史が浅い時期の作品でありますため制作も手探り状態であり、今では
当たり前にいる「設定」が不在のためミスが目立ちます。たとえば1964年の
鉄腕アトムの第56話が初のカラー制作ですから、カラーテレビ本体が普及して
いない時代に、資金繰りに苦労をしている孤児院の「ちびっこハウス」にカラー
TVがあるのは不自然でした。当時のスポーツカーブームからガルウィングドア
のモデルを愛車にしているまでは構わないのですが、デザインが雑で車に興味が
ないことが丸わかりです。しかしながら、現代の制作体制と制作委員会方式での
ブルーレイやDVDなどの円盤商品の売上で収益を回収するモデルは、数年内に
破綻するであろうことが予想できます。個人が買って支えきれるほどの規模では
なくなってしまっていることは、長々としたスタッフロールが他ならぬ証拠です。
あれだけの大人数の仕事と生活を守ることは、今のTVアニメでは無理なのです。

一人で何枚も買うといった行為での延命は、作り手も受け手もお互いによくない
関係ですから、アニメを愛するがゆえに厳しく接するならば「滅びるなら、滅べ」
と言う他にありません。そして今度は、少人数の精鋭で復興してくることを願う
ばかりです。具体的には「原始の海に戻れ」ということです。本作品は細やかな
演出指示により作画の手間をとことん省いています。まずキャラクターデザイン
からよくできています。設定上でマスクを被っていますため、伊達直人シーンを
減らしタイガーマスクのシーンを増やすだけで、マスクを被っている限りは顔を
動かさずに済ませられます。大幅な作画コストの削減例です。それでいて声優は
同じギャラですから内面台詞はセルを使わなくても声だけで表現できます。会話
を避けられないシーンでは、数枚の口パクで動いているように見せれば低コスト
です。カメラワークを上手に使って動かす場面のみを、丁寧に作画をすることで
静と動のコントラストを強調できて、画面をダイナミックにできます。動かない
ことで迫力が生じるのです。それこそがジャパニメーションの神髄ですが海外に
輸出しようと企む人々は浅薄な内容に豪華な3DCGをパッケージングしたもの
をジャパニメーションとして売り込もうとしています。ときどき作画枚数の数を
宣伝に使っているアニメを見かけますが、子供だましにも限度があります。作画
というものは、上手な人が描けば数枚で済むものでも下手な人に任せると枚数が
増えるものです。これはアニメに限らず仕事全般に言えますが、要領の悪い人に
仕事を任せた場合に異常に工数が増えるのと同じです。今のアニメ業界を支える
中心人物の高齢化が進む中で、新人育成が進まず、収益回収モデルも破綻すれば、
TVアニメといった非効率なものは滅びます。アニメファンはタイガーマスクの
ような見栄えは古くても骨子がしっかりとした作品を視聴しますから、新作には
興味を向けておりません。アニメ業界は数年内に衰退してしまいますが、その先
にあるものは「どん底からのルネッサンス」です。骨太の作品を期待しています。


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