夜が朝に変わる時間を眺めるのが好きです。
空には少しだけ星が残ってて起きたばかりの鴨が子犬みたいな声で鳴いてる川のそばを白い息を吐きながら歩きます。
寒さが心地いいです。
快楽ではない気持ちよさです。
帰る時は太陽に背を向けて歩くから、変な気分にもなるけど家に着く頃にはちゃんと朝が来てて安心できます。

冬の寒さは僕の手をどんどんカサカサのシワシワにしていきます。
それはたぶんずっと好きになられへんのやろーなー。
けど暑いのが嫌いな恋人にくっついても嫌な顔をされないから、冬のことは少し好きになりました。
どの季節が好きとかはありません。
冬は気持ちが苦しくなる記憶が多い気がして「好き」と言うのは難しい季節でした。
少しだけなにかが変わったのかも知れません。
まだわかんないけど。

目の前にある物やおきている現象に身を任せてぽてぽて歩くことで、自分がひとつの枠組みの中にいることを再確認出来ます。

「あ〜鳥」
「あ〜猫」
「あ〜太陽出てきてあったかい」
「あ〜お風呂入ってないの思い出した」

自分が「何者か」なんて誰にもわかりません。
朝起きたら何かになってるなんてありえない。
希望的観測も行き過ぎたらただのバカ。
期待しすぎて崩れ落ちるより自分が自分だと言うことをわかった方がいいです。
「世界は変えられる」
「世界を変えてやる」
「世界を壊してやる」
なんて凡庸な考えなんでしょうか。
言葉は違えども、こういう感覚は誰しもが持ち合わせてますよね。

それにも気付かず、自分だけの感情だと勘違い出来ていた頃が愛おしいです。