AKB48の景色は常に変化しています。
坂道が謹製のパッケージで提供されるものだとすれば、AKBはフリーマケットです。この比較表現は、坂道はアイテムだけど、AKBはハードウェアである、という違いも意味しています。
メンバーが常に流動的な多人数グループという点で、両者は一見似ています。しかし、坂道が常に一定のイメージを維持しているのに対して、AKBは不定形な印象を与えます。そのイメージを表象的に形成する最大の要素はメンバーの顔触れですが、AKBにおいては、構成するメンバーのクラスタ勢力が時代とともに推移してきた…ということを、『モウリスの雑談室なのだ 令和元年』(5/2放送)、『週刊48NEX〜AKBヤンキーVSオタク10年戦争論序説』(5/27放送)で詳細なデータをもとに明らかにしました。
今回(11/29放送)の『AKB社会学〜都市人口動態とモール系アイドル』は、さらに大きなアングルから押し進めた論考をご紹介しました。初期ヤンキー時代(前田・大島)からオタク時代(渡辺・指原)へ移行し、近年はニュータウン系勢力が目立ち始めている…というところで終わった5月の番組の続編です。
「どんな料理でも載せられる皿」であるAKBは、「そのとき食べたいものを載せる皿」でもあるとすると、メンバーの顔触れと、それが醸し出す雰囲気が、時代とともに変わって当然とも言えます。となると、現在どんな料理が載っていて、これからどんな料理が載ることになるのかは、社会の趨勢を見渡せば分かるのではないか? 今回は、日本の人口動態を明らかにした『未来の地図帳』(講談社現代新書)と『教育格差』(ちくま新書)を主要参考とし、自治体の統計データも交えながら、昨今のAKB48グループの現象と照らし合わせてみるという試論を行いました。
上記の2冊はいずれも、理想社会を論じる社会評論などではなく、統計データを徹底的に客観視することによって身もふたもない現実を浮き彫りにし、極めて現実的な論点を提示しています。特に『教育格差』は、並大抵の処方箋では効果が得られない社会の《階層化》を容赦なく突きつけています。詳しくは番組をご覧いただきたいのですが、要は現在の日本国土で起きている人の「動き」と「階層化」に着目して、AKB48グループを俯瞰してみたということです。 例えば、最近のオーディション参加者に大阪府出身者が目立ちますが、人口動態データにもその傾向が見られる…という具合いです。
AKB48の初期は、高橋みなみに象徴される、カーストの抑圧からのし上がるパワー…いわゆる「マジ」な世界観が基調でした。その後、AKB的アイドル像の基礎が形成されるにつれて、自己演出型のメンバー(再帰的アイドル)の人気(具体的には総選挙の順位)がヤンキー系を凌駕していきます。しかし、どちらの勢力も、象徴するメンバーたちの卒業に合わせて、グループの前景から薄れていきました。代わりに、向井地美音が総監督に就任した辺りから、これまでにはなかったカラーのメンバー群が現われ始めました。
ヤンキー系とオタク系は、対立的でありながらも、「ローカル少女が都会に出てきて一花咲かせる」という点では共通していました。ところが近年は、そうした成り上がり的な泥臭さをほとんど感じさせないメンバーが多く見受けられるようになりました。しかもSHOWROOM配信によってメンバーの日常感はさらに増幅。大島優子は自分のことを「ふつうの女の子」と言いましたが、いまのメンバーたちは、そうした自意識によるレトリックではなく、本当にふつう感が漂う「放課後アイドル」の様相を呈しています。そうしたクラスタを番組内では《ニュータウン系》と名付けました。
しかし、『マジムリ学園』が物語設定にしていたように、すでにニュータウンは過去のものになっています。現在では「(ショッピング)モール系」が主勢力化しつつあり、さらに近未来には「タワマン(タワーマンション)系」が現われるのか?…というのが、今日現在の論考フェイズです。いや、むしろタワマン系は坂道で、AKBは別の展開をするかも?…など、番組中の視聴者コメントも含めて検討しました。 その答えはまだ出ていませんが、来年にもその兆候は現われるはずです。最近加入が決まった新メンバーたちには、特段の注目が必要です。 世の中のスターが旧メディアからネットメディアに大きく移行している大転換期のいま、AKBにどんな「時代」が反映されるのかは、たいへん興味深いところです。
AKB48は「ドキュメンタリー」であると思っています。それをさらにドキュメントするのが48ジャーナルNEXです。今後も、グループもメンバーも、そしてオタクの生態も、まるごとドキュメントしていきます。そんな視点が、AKB48グループをさらに楽しむためにわりと有効なんじゃないかと、最近は強く思っている次第です。 (了)
坂道が謹製のパッケージで提供されるものだとすれば、AKBはフリーマケットです。この比較表現は、坂道はアイテムだけど、AKBはハードウェアである、という違いも意味しています。
メンバーが常に流動的な多人数グループという点で、両者は一見似ています。しかし、坂道が常に一定のイメージを維持しているのに対して、AKBは不定形な印象を与えます。そのイメージを表象的に形成する最大の要素はメンバーの顔触れですが、AKBにおいては、構成するメンバーのクラスタ勢力が時代とともに推移してきた…ということを、『モウリスの雑談室なのだ 令和元年』(5/2放送)、『週刊48NEX〜AKBヤンキーVSオタク10年戦争論序説』(5/27放送)で詳細なデータをもとに明らかにしました。
今回(11/29放送)の『AKB社会学〜都市人口動態とモール系アイドル』は、さらに大きなアングルから押し進めた論考をご紹介しました。初期ヤンキー時代(前田・大島)からオタク時代(渡辺・指原)へ移行し、近年はニュータウン系勢力が目立ち始めている…というところで終わった5月の番組の続編です。
「どんな料理でも載せられる皿」であるAKBは、「そのとき食べたいものを載せる皿」でもあるとすると、メンバーの顔触れと、それが醸し出す雰囲気が、時代とともに変わって当然とも言えます。となると、現在どんな料理が載っていて、これからどんな料理が載ることになるのかは、社会の趨勢を見渡せば分かるのではないか? 今回は、日本の人口動態を明らかにした『未来の地図帳』(講談社現代新書)と『教育格差』(ちくま新書)を主要参考とし、自治体の統計データも交えながら、昨今のAKB48グループの現象と照らし合わせてみるという試論を行いました。
上記の2冊はいずれも、理想社会を論じる社会評論などではなく、統計データを徹底的に客観視することによって身もふたもない現実を浮き彫りにし、極めて現実的な論点を提示しています。特に『教育格差』は、並大抵の処方箋では効果が得られない社会の《階層化》を容赦なく突きつけています。詳しくは番組をご覧いただきたいのですが、要は現在の日本国土で起きている人の「動き」と「階層化」に着目して、AKB48グループを俯瞰してみたということです。 例えば、最近のオーディション参加者に大阪府出身者が目立ちますが、人口動態データにもその傾向が見られる…という具合いです。
AKB48の初期は、高橋みなみに象徴される、カーストの抑圧からのし上がるパワー…いわゆる「マジ」な世界観が基調でした。その後、AKB的アイドル像の基礎が形成されるにつれて、自己演出型のメンバー(再帰的アイドル)の人気(具体的には総選挙の順位)がヤンキー系を凌駕していきます。しかし、どちらの勢力も、象徴するメンバーたちの卒業に合わせて、グループの前景から薄れていきました。代わりに、向井地美音が総監督に就任した辺りから、これまでにはなかったカラーのメンバー群が現われ始めました。
ヤンキー系とオタク系は、対立的でありながらも、「ローカル少女が都会に出てきて一花咲かせる」という点では共通していました。ところが近年は、そうした成り上がり的な泥臭さをほとんど感じさせないメンバーが多く見受けられるようになりました。しかもSHOWROOM配信によってメンバーの日常感はさらに増幅。大島優子は自分のことを「ふつうの女の子」と言いましたが、いまのメンバーたちは、そうした自意識によるレトリックではなく、本当にふつう感が漂う「放課後アイドル」の様相を呈しています。そうしたクラスタを番組内では《ニュータウン系》と名付けました。
しかし、『マジムリ学園』が物語設定にしていたように、すでにニュータウンは過去のものになっています。現在では「(ショッピング)モール系」が主勢力化しつつあり、さらに近未来には「タワマン(タワーマンション)系」が現われるのか?…というのが、今日現在の論考フェイズです。いや、むしろタワマン系は坂道で、AKBは別の展開をするかも?…など、番組中の視聴者コメントも含めて検討しました。 その答えはまだ出ていませんが、来年にもその兆候は現われるはずです。最近加入が決まった新メンバーたちには、特段の注目が必要です。 世の中のスターが旧メディアからネットメディアに大きく移行している大転換期のいま、AKBにどんな「時代」が反映されるのかは、たいへん興味深いところです。
AKB48は「ドキュメンタリー」であると思っています。それをさらにドキュメントするのが48ジャーナルNEXです。今後も、グループもメンバーも、そしてオタクの生態も、まるごとドキュメントしていきます。そんな視点が、AKB48グループをさらに楽しむためにわりと有効なんじゃないかと、最近は強く思っている次第です。 (了)
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