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結城浩の「コミュニケーションの心がけ」

Vol.223 結城浩/esa.ioを使ってみよう(1)/自意識でスウィング・バイ/思い込みに気付く心/

2016/07/05 07:00 投稿

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  • 仕事をする心がけ
  • 文章を書く心がけ
Vol.223 結城浩/esa.ioを使ってみよう(1)/自意識でスウィング・バイ/思い込みに気付く心/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年7月5日 Vol.223

はじめに

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 * * *

推敲の話。

秋に刊行予定の『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』を書いています。

先日、第4章の構成を整えていました。 いったん文章をまとめた後、 何度も読み返しておかしなところを直していきます。

それはいいのですが、 推敲の途中で自分の「モード」を間違ってしまうことがあります。 つい「勉強モード」にはまってしまうのですね。 本来は「推敲モード」で進むべき状況なのに。

「勉強モード」というのは、 文章にわかりにくいところがあったときに、

 わかりにくいな。もっとがんばってじっくり読んで、
 しっかり考えなくちゃ!

という態度でいることです。

それに対して「推敲モード」というのは、 文章にわかりにくいところがあったら、

 うん、これはわかりにくいな、
 もっとわかりやすく書き直さなくちゃ!

という態度でいることです。

違いはわかりますよね。

簡単にいえば、 「勉強モード」は、 「わかりにくいのは読んでいる自分のせいだ」と考える態度。 「推敲モード」は、 「わかりにくいのは文章のせいだ」と考える態度です。

ふだん自分が誰かの本を読んで勉強しているときには、 文章が悪い!と文句を付けてもしようがありません。 勉強モードでは勉強をしなくちゃね。

でも推敲モードでの書き手は、 読むときにがんばりすぎてはだめです。 文章の品質を上げるのが目的なんですから、 わかりにくいところや、読みにくいところがあったら、 がんばって理解しようとするのではなく、 文章を直せないかと考えるべきなのです。

「推敲モード」は《生意気でわがままな読者モード》ともいえます。

 私が理解できないのは文章が悪い。
 何度も読み返さないと文意が取れないのは書き手が悪い。
 すべては書き手と文章が悪いんだ!

そんな読者になったつもりで読む。 そういう態度が「推敲モード」には必要なのです。

 * * *

前提条件の話。

ネットをながめていると、不安感をむやみとあおったり、 過激な表現や極端な言い回しを使う記事を見かけることがあります。 たとえば「本気でセキュリティを守りたかったら○○は無意味だ!」 というような表現のことです。

一般論として「セキュリティで〇〇は無意味」のような 「単純化された言明」は注意深く扱う必要があります。 セキュリティを守りたいというときは、

 ・どんな資産を
 ・どんな脅威から
 ・どれだけの期間
 ・どれだけのコストをかけて
 ・どんな形で守りたいか

を定めないことには何も言えないからです。 前提条件をまったく定めずに「○○は無意味」とはいえません。

上に書いた「どんな形で守りたいか」のところを少し補足します。 たとえば、脅威を「防止」することと「検出」することは違いますが、 どちらも「セキュリティを守る」の範疇に入る概念です。

「防止」と「検出」を対比してみます。

「防止」の例:「この機密情報を盗まれないようにする」こと。

「検出」の例:「この機密情報を盗まれてもいいが、 盗まれてから1分以内に盗まれたとわかるようにする」こと。

どちらの場合もあり得ますし、 防止と検出で対策が異なるというのも理解できると思います。

私たちがセキュリティについて考えるとき、 心の中には必ず前提条件があります。 それを明確にせずに「○○は無意味」ということはできません。

セキュリティに限りません。 複雑な事象を検討するときには必ず「前提条件」を確かめる必要があります。 そして前提条件をきちんと確かめた上で結論づけるのが専門家です。 専門家は安易に「○○は無意味」と結論づけたりはしません。 素人ほど、前提条件をすっ飛ばして安易に着地させたがるものです。

誰かから「○○っていい?」と聞かれたとき、 「そんなこと聞かれても、それだけじゃ答えられないよ」 となることが多いでしょう。前提条件を確認したくなるはずです。

ですから、ときに、素人よりも専門家の方が自信なさげに見える…… という奇妙な現象が起きることもありますね。

 * * *

参考書の話。

先日一冊の参考書を買いました。

 ◆『ヴィジュアルガイド 物理数学 1変数の微積分と常微分方程式』
  (前野昌弘)
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4489022409/hyam-22/

タイトル通り、物理数学の本です。 結城がこの本を買ったのは、 Twitterで色がたくさん使われているという話題がでたからです。

一般的に、色数が多い本というのは楽しいですけれど、 私はいささか苦手です。 色が多くなるというのは構成要素が多くなるわけで、 「いい本」を作るのはとても難しいことなのです (少なくとも結城には)。 図鑑のようなものならいざしらず、 数式がたくさん出てくる本で色数を多くしたらどうなるのかな。 そんな興味で買いました。

ぜんぶを熟読したわけではありませんが、 想像していたよりもずっと抑えめの色合いで見やすそうです。 数式の細かい部分まで色分けがなされており、 しかも内容の理解しやすさに貢献しそうな色使いで、 この本を組版するのにどれだけの手間が掛かったのだろうと思いました。

この本を通して、内容を勉強するだけではなく、 表現も研究してみようと思っています。

 * * *

共同運営マガジンの話。

少し以前のニュースですが、 クリエイター向けのプラットホームnote(ノート)で、 「共同運営マガジン機能」が使えるようになりました。

 https://note.mu/info/n/n0e79f2f571df

公式のアナウンスによると、これは、 「有料マガジン」と「継続課金マガジン」を複数のクリエイター(最大10名)で運営できるようにする機能とのことです。 要するに、複数人のクリエイターが集まって、 一つの「オンライン雑誌」をWeb上で作成・販売できるわけですね。

結城自身はこの機能をすぐに使う気持ちも予定も(そして余裕も) ないのですが、 こういうサービスを通しておもしろい読み物が生まれるかどうか、 そこに興味があります。

自分では文章も書けない、絵も作れない、写真も音楽もできない。 でも知り合いに声を掛けて複合的な「雑誌」を作れる人。 それもまた編集者でしょうか。それともプロデューサでしょうか。 そんな人には有効なサービスかもしれませんね。

 * * *

ビル・カニンガムさんの話。

ビル・カニンガムさんは、アメリカの写真家です。 先日、彼の訃報を聞きました。

 ◆米の写真家、ビル・カニンガム氏死去
 http://www.asahi.com/articles/ASJ6V5R9CJ6VUHBI019.html

 ◆ストリート・スナップの伝説が死去 NYが愛したビル・カニンガム
 https://www.buzzfeed.com/davidmack/bill-cunningham-dies-1

カニンガムさんのことは、 ドキュメンタリー映画『ビル・カニンガム&ニューヨーク』で知り、 その映画と言葉をこの結城メルマガでも取り上げたことがあります (以下のnote(ノート)でも読めます)。

 ◆美を追い求める者は、必ずや美を見出す / ビル・カニンガムの言葉より(文章を書く心がけ)
 https://note.mu/hyuki/n/n99bedf3e294b

 ◆ドキュメンタリー映画『ビル・カニンガム&ニューヨーク』
 https://www.youtube.com/watch?v=x2HU-iaiPgo

結城は写真にもファッションにも疎いのですが、 この映画は妻と観てたいへん印象に残っています。 ひとりの人の生きる姿、特に仕事を通して生きる姿というのは、 心の深いところまで届くようです。

ふと「働く姿」に関連して、 人気ドラマ『重版出来!』の一シーンを思い出しました。 身を持ち崩して一日じゅう酒に溺れている漫画家がいる。 その娘アユちゃん(中学生)が、 書店で働いている人の姿を見てぽつりと言う。

 「大人が働いているの見ると、ほっとする」

最近思うのですが、人間はやはりソーシャルな存在であって、 良くも悪くも他の人間に影響を受ける。 またどんなに冷たく見え、他人に無関心に見える人も、 他の人間が気に掛かる。

SNSで承認欲求を満たすという話題がありますが、 承認欲求という一単語で済ませないものがあります。 他の人の生きているようすを見ることで、 自分の立ち位置を確認する。 それは大事なことなんだと思います。

ビル・カニンガムとアユちゃん。 その二つの話題にはあまり関係はないように見えますが、 結城は何か大事なことを見つけたように思います。

あなたは、誰のどんな生き方を見て、 自分の立ち位置を確かめていますか。

 * * *

では、今週の結城メルマガを始めましょう。

どうぞ、ごゆっくりお読みください!

目次

  • はじめに
  • esa.ioを使ってみよう(1) - 仕事の心がけ
  • 自意識でスウィング・バイ - 文章を書く心がけ
  • 思い込みに気付く心
  • 会社の思い出と、多様性の受容
  • おわりに
 

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